ヨガインストラクターの間では、骨盤底筋ヨガを専門的に指導することを目指す指導者養成コースも登場しているほど。
更年期症状やPMS、生理痛といった女性特有の症状の緩和だけでなく、ダイエットやアンチエイジングにも効果があるとされる骨盤底筋ヨガ。
ここでは骨盤底筋ヨガが人気の理由や期待できる効果、具体的なポーズなどをご紹介します。
骨盤底筋って一体どこの筋肉なの?
そもそも骨盤底筋とは一体どの筋肉のことを指しているのでしょうか。
骨盤底筋は骨盤の一番下、つまり会陰のあたりにある筋肉で、具体的には恥骨から仙骨までをハンモックのような形で覆う筋肉です。
複数の細かい筋肉から成り立つので「骨盤底筋群」という呼び方をする場合も多いです。
この筋肉の役割は、子宮や膀胱、腸などの内臓を支えること。
そして、排泄のコントロールの役割も果たしている筋肉です。
特に、尿もれやオナラが我慢できないなどの症状がある場合は骨盤底筋が弱っている、ということが考えられますし、排尿を途中で止めたりするのも骨盤底筋の力によるものです。
なぜ近年骨盤底筋に注目が集まっているのか。
それは「人生100年時代」になっているからでしょう。
長生きできるのはいいですが、やはりそれは健康あってのこと。
できるだけ自立した生活ができた上での長生きは誰もが望むところです。
しかし、平均寿命と健康寿命には10年の乖離があるとされ、自分の口でおいしくご飯を食べ、自分で排泄できない状態で人生の晩年を過ごす人は少なくありません。
そのようなリスクを減らすためには、若いうちから運動習慣を身につけ骨や筋を維持する努力が必要で、特にこの骨盤底筋群は「人間の尊厳に関わる筋肉」として注目されているのです。
骨盤底筋はなぜ衰えるの?
骨盤底筋は男女ともにありますが、どちらかといえば女性の方が衰えやすいと考えられています。
最大の理由は「出産」です。
出産経験のある女性は産後に「尿もれ」を経験すると思いますが、これも骨盤底筋が出産によって強いダメージを受けているからだとされます。
他にもデスクワークが中心で運動不足に陥っている、姿勢を正しくキープするのが辛い、重いものを持ち上げるような肉体労働をしている(腹圧がかかりやすい)、便秘しがち、といった人は骨盤底筋が衰えやすいと指摘されています。
何より筋肉は使わなければ衰えるもの。それは骨盤底筋に限ったことではありません。
骨盤底筋は下半身の運動によっても刺激されますし、呼吸によっても刺激されますが、運動不足や浅い呼吸ではあまり使われないので衰えるのも早いと考えられています。
骨盤底筋が衰えているサインを見逃さない
骨盤底筋が衰えているかどうかにはいくつかのサインがあります。
尿もれは最もわかりやすいサインで、特に女性に多いとされますが、男性でも頻尿やキレの悪さなどがサインとなって現れます。
他にも骨盤底筋が弱ると男女ともに排尿時に痛みが起こったり、腰痛が取れなかったり、あるいは歩いているだけでおならが出やすくなった、といった報告もあります。
さらに男女ともに骨盤底筋が衰えてくると、性生活にも問題が起こることがよく知られています。
特に女性の場合ですが、性交痛や膣の乾燥による性感染症の発症、子宮脱といって子宮が下り膣から出てしまうケースもあるのです。
いずれにせよ、デリケートゾーンに何らかのトラブルや不調が感じられたら骨盤底筋が衰えているサインと捉えた方が良いでしょう。
骨盤底筋を鍛えるとどんな効果が得られるの?
私たちの内臓は日頃から重力によっても下方向にも引っ張られ続けています。
放置しておけば加齢とともに下垂するばかり。
しかし骨盤底筋を鍛えることで、内臓をなるべく正しい位置にセットしておくことが可能になると考えられます。
他にも、骨盤底筋を鍛えることでボデイラインのたるみを予防する、姿勢が安定する、骨盤内の冷えを予防し血流を促進する、ぽっこりした下腹を凹ませる、便秘を改善するといった効果も得られます。
また、先に登場したサインの数々(頻尿、尿もれ、おなら、膣の乾燥、性交痛など)の緩和も期待できます。
骨盤底筋を鍛えるヨガのポーズは無数にある!
では、実際にはどのように骨盤底筋を鍛えれば良いのでしょうか。
さっそく骨盤底筋を鍛える効果が高いヨガのポーズをご紹介しましょう。
膣の引き上げ(ムーラバンダ)
最も簡単なポーズはムーラバンダです。
最近は「膣トレ」とか「膣呼吸」といったダイエット方法が流行っていますが、どれもムーラバンダと同様です。
やり方は簡単、座った状態でも寝た状態でも良いので、息を吐く時に会陰のあたりをティッシュ一枚上に引き上げるように引き上げる。
これだけです。
最初は骨盤底筋が意識できないかもしれません。
尿を途中で止めるような感じや、お尻の穴を閉める感じになってしまうかもしれません。
しかし繰り返して練習すれば、尿道口と膣口、そして肛門は全く別で、それぞれ別々に締めたりゆるめたりすることができるようになります。
慣れてきたら尿道口、膣口、肛門と別々に締めてゆるめるという練習をするのも良いでしょう。
橋のポーズ(セツバンダアーサナ)
- 仰向けになって膝を立てたら、息を吸いながらお尻を天井方向に持ち上げていきます。
- ポーズが決まったら内腿を閉じて数呼吸ホールド。特に息を吐くときに会陰を頭の方向に引き上げるように意識しましょう。
- 数呼吸したら、息を吐きながら背骨を床に下ろしていき、最後にお尻をつきます。
猫のポーズ(キャットアンドカウ)
四つ這いになり、吸う息で背骨を天井方向に引き上げ、吐く息で背骨は大きなアーチを描くように丸めるという連続したポーズです。
特に下を向いた時に息を吐くので、会陰からお腹の当たりをぎゅっと背中方向に引き入れると、骨盤底筋やバンダの強化になります。
→ヨガのキャットアンドカウのポーズとは?4つの効果と正しいやり方を徹底解説
ダウンドック(アドムカシュバアーサナ)
ダウンドックは両手両足でバランスを取り、お尻を天井にむけるヨガの基本ポーズですが、この時にもムーラバンダの呼吸を意識してホールドすると、骨盤底筋が刺激されるのが感じやすいはずです。
→ヨガのダウンドッグとは?5つの効果と正しいやり方を徹底解説
骨盤底筋をセルフケアして健康に過ごそう
普段皆さんがよく練習しているヨガのポーズでも、骨盤底筋を意識しながら動いてみるだけで骨盤底筋のトレーニングになります。
くしゃみや大笑いする時に尿漏れしてしまう人も案外多いようです。
特にアラフォー以降の女性には尿もれパットが売れています。
相談しにくい悩みですから、予防とセルフケアは何よりも大切です。
しかも、泌尿科に相談に行っても、ここで紹介したようなトレーニングが紹介されますので、ぜひ自分の中で習慣にしてみてくださいね。