ヨガクラスなどでは、アーサナのことをみなさんに分かりやすいようごく簡単に表して、ヨガのあらゆるポーズのことだと教わるかもしれません。
しかし、それは現代におけるアーサナの意味合いでしかありません。
実は、ヨガのアーサナには単なるポーズ以上の意味や目的があるのです。
アーサナについて深く知ることは、ヨガを深めるきっかけにもなります。
今回は、より詳しくヨガのアーサナについて解説していきます。
ヨガを難しいと思っている方、ヨガに夢中になり始めている方には、特に知っていただきたいと思います。
ヨガのアーサナの由来は?瞑想のための姿勢
アーサナは、サンスクリット語で「座る」という意味があります。
もともとは瞑想を深める座法のことで、その姿勢なども含めた瞑想を深めるためのツール全般を指すものだと考えられています。
現在の私たちが使うアーサナ=ポーズとは全く違う意味合いだったのです。
そして、ヨガをする修行者や行者が行っていた座法が発展を遂げ、バリエーション豊かなヨガポーズが生まれました。
さまざまなポーズを通して心身を鍛錬することで、長時間の瞑想に耐えうる状態を作りだしていくことが真の目的だと言えます。
形は異なりますが、今も昔もアーサナは瞑想を深めるためのツールなのです。
筆者自身、「ヨガのポーズは瞑想を深めるための訓練のようなもの」とアメリカ人のヨガ講師から教わったとき、「よく分からない」というのが正直な感想でした。
しかし、ヨガの勉強とアーサナの練習を続けていくうちに、「そういうことか!」と納得することができました。
瞑想は手軽に始められるものでもありますが、集中して長時間行うことは非常に難しいものです。
特に筆者が苦戦したのは、瞑想の基本姿勢であるあぐら(スカーサナ)のときに、「楽に座る」「力を抜く」ということでした。
瞑想が10分、15分と長くなっていくにつれて、どうしても背中が丸まってきてしまい、背筋を伸ばそうとすると全身に無駄な力が入ってしまうのです。
「楽な姿勢を続けられない」ことが、瞑想に集中できない原因になっていました。
しかし、ヨガのクラスで鍛錬を続けていくうちに、インナーマッスルが鍛えられ、楽に背筋を伸ばし骨盤を立てて座ることができるようになったのです。
すると、瞑想のための姿勢もごく自然に継続でき、姿勢に気をとられることなく瞑想に集中できるようになりました。
瞑想がうまくできない、集中力が続かないという方は、ヨガのアーサナを通して心身を鍛えることで、質の良い瞑想ができるようになると私は実体験から思います。
→【恋愛・仕事】瞑想で得られる15のすごい効果一覧。瞑想の効果が出る期間についても解説
ヨガのアーサナの意味は?八支則の第3段階に示されている
アーサナという言葉は、ヨガの教えであるアシュタンガ=八支則に出てきます。
八支則は、ヨガの聖典とも言われる「ヨーガ・スートラ」で示されている8つの段階・行法のことで、ヨガ哲学の基本です。
→ヨガの教典『ヨーガスートラ』とは?分かりやすく『ヨーガスートラ』について徹底解説
アーサナは、その8段階の中の第3段階に示されています。
ヨガを始めたばかりの方にとっては、アーサナ(ポーズ)がヨガのすべてのように見えるかもしれませんが、実はヨガのほんの一部なのです。
- ヤマ(禁戒):行ってはいけない5つの行い
- ニヤマ(勧戒):実践すべき5つの行い
- アーサナ(坐法):瞑想を深めるための姿勢の練習
- プラーナヤーマ(調気):呼吸をコントロールする
- プラーティヤハーラ(制感):感覚をコントロールする
- ダーラナー(疑念):集中、精神が統一され周囲が気にならなくなる
- ディヤーナ(無心):瞑想、感覚制御と集中が深まっている状態
- サマーディ(三昧):ヨガの最終目標、悟りの状態
ヨガの八支則は、最終段階としてサマーディが示されています。
煩悩から解放された悟りの境地。最上級の至福の喜びを感じる段階だとも言われるものです。
第3段階に出てくるアーサナは、その道筋の一つ。
あらゆるポーズを練習し、第7段階で出てくる瞑想を深めるために最適な心身の状態を目指します。
アーサナのメリット、効果
ヨガのポーズの種類は非常に多く、初心者の方でも取り組みやすいポーズから上級者向けのアクロバティックなポーズまでさまざまです。
そのため、アーサナのメリットや効果も非常に幅広く考えられます。
リラックス効果、疲労回復効果
例えば、ゴロンと仰向けで寝転び休むようなポーズである「シャバーサナ」も、立派なアーサナの一つです。
サンスクリット語で「屍」を意味する「シャバ」と「アーサナ」が合わさった言葉です。
全身の筋肉の緊張を緩める効果があるので、ヨガクラスの最後に行われることも多いですね。
高いリラックス効果や疲労回復効果が期待できます。
また、自然と頭の中を無の状態にしやすいので、瞑想の直前にも最適なポーズです。
→疲労回復方法としてのヨガ!疲労回復に効果的なヨガポーズ3選
姿勢が良くなる、お腹が引き締まる
太陽礼拝に出てくる代表的なポーズ「プランク」や「チャトランガ」は体幹部分のインナーマッスルを鍛え、身体の軸をしっかりさせるのに大いに役立ちます。
→ヨガのプランクポーズとは?7つの効果と正しいやり方を徹底解説
姿勢が良くなることはもちろん、ぽっこりお腹がぐっと引き締まります。
スタイルアップしたい方にも最適なのです。
個人的な意見ですが、太陽礼拝をくり返し行い自分のものにでき始めた頃から、瞑想の姿勢(スカーサナ)で長時間座り続けられるようになりました。弱っていた体幹が鍛えられた証拠ですね。
ヒップアップ効果
ヨガの立位のポーズには、下半身の筋肉を必要とする姿勢が多くあります。
ハイランジ、英雄のポーズ2(戦士のポーズ2)などがその代表です。
→ヨガの英雄のポーズとは?英雄のポーズ1〜3の正しいやり方と効果を徹底解説
普段あまり使われないお尻の筋肉も刺激され、ヒップアップ効果が期待できます。
実際に、ヨガ講師でお尻が垂れている方はほとんどいません。
他にも、ダウンドッグで片足を上げるポーズ、椅子のポーズなど、お尻の筋肉が使われるポーズはたくさんあります。
→ヒップアップに効果的なヨガポーズ3選!ヨガはお尻の引き締めにも期待大!
血行促進効果(冷え、むくみの解消)
ヨガが冷えやむくみの解消に良いというのは広く知られていますね。
数多くあるヨガのポーズで全身をくまなく動かしていくと、足先から指先までぽかぽかと温まってくるのが分かります。
ストレッチ効果や筋肉への刺激によって血行が良くなると共に、副交感神経が優位になることでも血行が促進されます。
持久力の向上、疲れにくくなる
ヨガは一概に何分やるべきだという決まりはありませんが、ヨガクラスでは30~50分ほどアーサナを行うことが多いと思います。
一つ一つのポーズにはそれほど負荷がないように見えても、全身のあらゆる筋肉を刺激しています。
さらに呼吸と共にポーズを続けることで、心肺持久力が向上していきます。
そのため、続けることで自分でも気が付かないうちに持久力がアップしているのです。
生徒さんを見ていても、始めは前半20分でヘトヘトだったのが、続けるうちに40分間スムーズに動き続けられるようになる方がほとんどです。
日常生活を送る上でも、疲れにくくなったという声もよく耳にします。
集中力、忍耐力の向上
ヨガのポーズを繰り返していると、集中力や忍耐力といったメンタル面も鍛えられます。
例えば、木のポーズ、英雄のポーズ3(戦士のポーズ3)などは、集中しなければ到底できないポーズです。昨日はできたから今日もできるとは限りません。
→ヨガの英雄のポーズとは?英雄のポーズ1〜3の正しいやり方と効果を徹底解説
上手くバランスが取れないとときには集中していない自分に気づくことができるでしょう。
また、誰にでも難しいと感じるポーズはあるかと思います。
そういったポーズを長くキープすることで忍耐力も鍛えられます。
辞めてしまうのは簡単ですが、あと1呼吸…といったようにぐっと忍耐することで、心の鍛錬にもなります。
→集中力を高めるヨガポーズ3選!初心者でも簡単にできるアーサナを動画で徹底解説
心が安定する
いくつかのポーズを続けて行うヨガのアーサナは「動く瞑想」とも言われます。
ヨガを始めたばかりのうちはポーズについていくことに一生懸命かもしれませんが、ポーズの流れを覚え始めると夢中になって行うことができます。
すると、瞑想中のように頭の中の雑念を手放すことができ、心の安定がはかれます。
不安や心配事、イライラといった感情にも距離を置くことができます。
ヨガのアーサナで重要なこと
ヨガのアーサナは、ヨガの聖典「ヨーガ・スートラ」の中で、“安定していて、快適であること”が理想だと示されています。
このどちらが欠けても、ヨガ哲学で目指すアーサナからは遠のいてしまいます。
ポーズができる=安定しているということではなく、心身共に波が無い状態でなくてはいけません。
他者と自分を比べたり、心の中のもやもやに気をとられたりしているうちはまだまだ…ということです。
そして、頑張ってポーズをキープしている状態ではなく、努力せずに快適さを感じられることが理想です。
そのためには、くり返し練習を続けることが必要です。
だからこそ、ヨガ愛好家たちは日々ヨガを行っているのですね。
ヨガのポーズをする際、つい力いっぱい行ってしまう方は、安定や快適を目指せるようにポーズを深めていってみてくださいね。
→ヨガの教典『ヨーガスートラ』とは?分かりやすく『ヨーガスートラ』について徹底解説
アーサナはヨガを深めるために重要!
ヨガのアーサナは単なるポーズのことではなく、最適な瞑想やヨガの最終目標である悟りの境地に向かうツールであるということをお分かりいただけたでしょうか。
ヨガは日本ではフィットネスの一つとして親しまれるようになり、アーサナという言葉も単なるポーズのことだと認識されることも少なくありません。
もちろん、ヨガをダイエットや美容を目的に続けても良いと思います。
ただ、今回ご紹介したようなアーサナの本来の目的を理解しておくと、ヨガを通じて、人生そのものを豊かにできると思います。