「使っていいの?」「使うのが恥ずかしい」「あれってできない人の補助道具でしょ」と感じ、使用を遠慮している人が多いようです。
ここでは基本的なプロップスの紹介や、プロップスの役割、効果的な使い方などについて詳しくご紹介。
ぜひプロップスを効果的に使ってみてください。恥ずかしいなんてことは絶対にありませんよ。
プロップスの歴史、いつからヨガで道具を使うようになったの?
プロップスの代表といえば、ヨガブロックを思い浮かべる人が多いと思いますが、実はヨガをする時にほとんどの人が使うヨガマットもプロップスの一つと言えます。
ヨガマットがヨガの練習に欠かせないのと同じくらい、ブロックやヨガベルト、そしてブランケットやアイピローも今は重要なヨガのプロップス(道具)です。
ヨガマットも含め、これらのプロップスをヨガに活用することをはじめて考案したのがアイアンガーヨガの創始者であるB.K.Sアイアンガー氏(1918〜2014年)とされます。
アイアンガー師もヨガマットを最初から使っていたわけでなく、指導の際にラグで手足が滑る生徒の光景を目の当たりにし、ラグを取り除いた下に、たまたま敷いてあったゴムの滑り止めの上でヨガをしたところ、ポーズが非常に安定することを発見し、天然ゴムパッドをヨガマットとして取り入れるようになったと言い伝えられています。
また、アイアンガー師はヨガの経験が浅い人から、体に何らかの不具合を抱えている人にまでヨガの身体的効果を体感してもらえるよう、積極的に道具を使って指導したことも知られています。
あえて道具を使うことで、ヨガのポーズを行う上で過度な緊張や無理をすることなく、継続してヨガを練習できるように指導していたのです。
日本でもアイアンガーヨガの指導者たちによってプロップスを使うポーズの練習方がどんどん広がっていった背景があります。
その流れで、今ではほとんどの流派でプロップスの使用が推奨されています。
ヨガマットも!?実は豊富にあるヨガのプロップス
ヨガマットもプロップスの1つであると紹介しましたが、プロップスには他にどんなものがあるかをご紹介しましょう。
- ヨガマット…手足が滑らないようにする。手足を安定させることでポーズも安定する
- ヨガブロック…ポーズの安定をさせるために微調整を行う道具
- ヨガベルト…無理なくストレッチするための補助具
- ボルスター…ポーズを長くホールドするときに身体を委ねる道具
- サンドバック…心地よい重さを体にかけてゆっくりと負荷をかけていく補助具
- ヨガ座布団…瞑想時に安定して座るための補助具
- ブランケット…シャバアーサナの際に身体を包んだり、ポーズの時に膝や首を守る
- アイピロー…シャバアーサナの際に目を休める補助具
- 椅子…チェアヨガの時にはもちろん、ポーズを深める際に使うことも多い
いかがでしょう。
他にも逆立ちを練習するためのプロップスや、卵型のブロック、背中のポジションを固定させるヨガスティックなどもあります。
このようにプロップスには実はさまざまな種類があります。
全てのプロップスを揃えることは難しいかもしれませんが、プロップスを使うことでヨガをもっと深めたり、違った角度で楽しめるようになるのです。
プロップスの効果的な使い方3選
1.ポーズを深める補助として
アイアンガー師が提案したプロップスの効果的な使用方法は、プロップスによって「ポーズを深める」方法です。
例えば、立位前屈(ウッターナアーサナ)で床に手がつかない人でも、ブロックを顔の下にセットすることでそこに手をつけば、それにより膝の後ろをゆっくり伸ばしたり、太ももの後ろを伸ばしたりすることが可能になります。
身体をぐいぐい押しながら、なんとか手を床につけようとするより、プロップスを上手に活用することで、無理なく同様の効果を得ることができるのです。
同じく立った状態で手で足の指を掴んで横に広げるポーズなども、足に手が届かない人も少なくありませんが、ヨガベルトを使えば同様の動きをすることができ、効果も同じように得られます。
できないからやらない、チャレンジしないのではなく、道具を使ってできることは積極的に道具を使ってやってみることで、ヨガのポーズの効果をどんな人にも体感できるようにしていくという使い方が最もよく知られたヨガプロップスの役割でしょう。
2.ポーズを緩める補助として
「頑張ればできるポーズだけれどキープできない」というヨガのポーズはないでしょうか。
そういったポーズをしている時は多少なりとも呼吸が止まっていたり、無理をしていることが多いもの。
であれば、やはりプロップスの出番。
例えば三角形のポーズだって、無理に下の手を床や足首にセットするのではなく、ブロックの上にセットすることで、体から緊張が抜けて3分ほどホールドしながら呼吸を味わうことができます。
長座前屈もお腹や膝裏にブロックやボルスターを挟むことでぐいぐい前屈するのではなく、3分程度は呼吸とともにキープしながら味わうことができるようにします。
できるポーズであっても、長くキープできないポーズのときにプロップスを使うことで、少しポーズを緩めることができ、ポーズを緩めることにより、キープの時間が長くなったり、ポーズの効果がより深くなったり、呼吸をコントロールしやすくなったりするのです。
3.リラクゼーションツールとして
ヨガプロップスを多用するヨガの種類といえば、アイアンガーヨガの他にリストラティブヨガがあります。
リストラティブヨガはアイアンガーヨガの正式指導者であり、理学療法士でもあるジュディス・ラサター氏によって1990年に考案されたヨガで、今は日本でもリストラティブヨガの指導者はたくさんいますし、リストラティブヨガを提供しているスタジオも増えています。
リストラティブヨガで有名なポーズとして、例えば「仰向けのがっせきのポーズ」があります。
ブロックとボルスターで緩やかな傾斜を作り、そこに背骨をあずけ、お尻の下にはザブを引き、足の裏をつけて膝を左右に広げたら、膝から腿の下にはブロックを入れます。
そして、手にアイピローやお手玉のようなもので優しい重みを与え、目元もタオルやアイピローなどで暗くし、さらに体全体にブランケットをかけて包みます。
プロップスを使った状態で横たわったり、座ったりすることにより、あらゆる関節を曲げて力を抜き、緊張を完全に抜いていきます。
1つのクラスでは4〜6ポーズ程度しか行いませんが、どのポーズも20分程度はホールドしていくことで呼吸が深まり、血圧が低下し、完全な副交感神経優位の状態を作ることができるのです。
ちなみにリストラティブヨガでは包帯をプロップスにし、それを頭(目元)に巻いて、リラックスに導くようなテクニックもあります。
安いマットを高いマットに変えただけでポーズが上達するのもプロップス効果
このようにヨガプロップスには大きく3つの使い方があり、どの使い方をしてもヨガから無理や頑張りが取り除かれ、ポーズが深まり呼吸が安定するようになります。
ですから、プロップスはどんな流派のヨガでも積極的に使って良いのです。
例えば、私の生徒さんから「ヨガマットを1万円もしたけれど滑りにくいゴムのものにしたら、今まで手足に力が入らなくてうまくできなかったブリッジのポーズができるようになった」という声がありました。
手足でマットをぐっと押すことができるようになったので、ブリッジの際に鼠蹊部やお腹を十分に天井方向に突き上げられるようになり、キープ時間も長くなり、ポーズから出た後に、全身の血流を感じられるようになったそうです。
プロップスを使うことで、今まで感じられなかった身体的効果が感じられるようになるケースは少なくありませんので、ぜひ積極的に活用してほしいと思います。
まとめ
ヨガプロップスの使い方は無限にあるので、どんどん活用することで、自分なりの使い方の発見もあります。
クラスでも遠慮なく使っていくことで、筋肉痛などを起こさずにヨガのポーズを深めていくことができます。
ほとんどのインストラクターは道具を使うことをポジティブに捉えていますので、ぜひ活用してくださいね。