そのため妊活がきっかけでヨガと出会ったり、ヨガが妊活に良いと聞いたから、とヨガスタジオに足を運ぶ人も増えているのです。
ヨガと妊活の相性がいいって本当でしょうか?
ここでは妊活とヨガについての関係をご紹介します。
原因不明の不妊に悩む人が多い
妊活とヨガの話をする前に、妊活に励む人の現状を確認しておきましょう。
何年も前から日本人の不妊治療患者数は世界1位と報道されており、日本人の多くが不妊治療を経験しているとされます。
少し古い報道ですが2015年に厚生労働省が夫婦全体の5組に1組が治療を受けていて、出生児数の5人に1人が生殖補助治療(いわゆる不妊治療)を受けて出生していると報告しています。
治療に踏み込む前のセルフケアをしている人も考えると、相当数が未妊(欲しいのに赤ちゃんを授かれていない状態)を経験しているのです。
ただし、不妊治療による出生率は世界最下位とされ、目的が達成されないまま治療を中断する人も多く、病院に行かずに諦めている人も多くいます。
不妊治療の問題は不妊の原因が「不明」という人が多い点でしょう。
例えば卵巣系の病気など、原因が明確であればその治療を行うことで妊娠が叶いやすくなりますが、原因不明だと治療が難航し、数年治療を続けたけれど金銭的にあるいは精神的に耐えられなくなった、と治療を断念するケースが多いのです。
ヨガで妊娠する、に科学的な根拠は一切ない
妊娠の希望が強い方ほど、どんな手段を使ってでも妊娠したいと考えがちです。
医療現場ではタイミング方や内服薬や注射による排卵誘発、精液を多く注入する人工授精などさまざまな治療が行われますが、それでも妊娠が成立しない場合、ネット上に溢れる「さまざまな情報」をどうしても試したくなる心情も理解できます。
がん治療なども同じです。妊娠についてよくある「非科学的な情報」には、子宝を授かるという神社やお守り、子宝を授かるという整体やマッサージ、お灸、アクセサリーやパワーストーン、植物、絵、コウノトリストラップや待受、などがよく目にするものです。
ヨガはここに入るわけではありませんが、サプリメントと似た部類に入りそうです。
サプリメント(または漢方薬)については不妊治療専門医が処方するものや、助産師などが監修しているものもあります。
そしてヨガを含む運動についても、医師は妊娠成立に向け「適度な運動」を推奨し、助産師は「冷えの解消」をアドバイスすることが多いので、この辺りでヨガが登場しやすいのです。
妊娠成立に必要な要素がヨガにもあることは間違いない
妊娠が成立するために必要なことはたくさんありますが、よく言われるのが「冷えとストレスを取り除く」というものです。
妊活をしている女性の多くが冷えに悩んでいるとされ、まずは冷えを徹底的に取り除くようにネット上でも情報が溢れています。
この冷えの解消には定期的な運動により筋肉をつけ、体内の血液循環良くするのが最適です。
この運動にヨガが良いと推奨されるのです。
骨盤周りや股関節、太ももを大きく動かすことが多いヨガは、下半身からお腹あたりを刺激するので、確かに子宮エリアの血液循環をよくしてくれます。
また、ストレス対策についてよく言われるのが「呼吸法」です。
鼻からゆっくり吸ってゆったりとした呼吸や、腹式呼吸を行うことは副交感神経を優位にし、血管を拡張してくれるので、血液循環にも良いですし、気持ちを落ち着けストレス解消に役立つ効果があることは科学的に証明されています。
これら2つの要素から、妊活とヨガは相性がいいとされているのです。
妊活されている人にヨガができること
ただし、個人的には「ヨガで妊娠する」と期待させるのは、インストラクターとしてすべきではないと考えます。
婦人科などのクリニックで「妊活のためのヨガ」というクラスをサービスでされているケースも増ありますが、このようなものは別として、ヨガで妊娠すると誤解させることは危険です。
体調を整えストレスを軽減するのにヨガは役立ちますが、それだけで妊娠するわけではありません。
夫婦生活、栄養状態、睡眠状態、年齢、あらゆる条件が揃い、奇跡的に妊娠が成立します。
ヨガ的に考えると、これは自分たちの意思でコントロールできるものではなく、目には見えない力によってもたらされるもので、さらにヨガ的な大きな視点で考えると「今世は子どもを持たない人生」というテーマなのかもしれません(インドは輪廻転生がベースです)。
妊活されている方にヨガができることは、運動の補助とストレスの軽減、そしてそれが続けば運動習慣やおおらかなマインドを手に入れることができる、というだけです。
それでもヨガはぜひやっておいて欲しい
ヨガと妊活の相性は良いですが、妊娠成立と関係あるかは分かりません。
それでも妊活をされている方にヨガをお勧めしたい理由があります。
それは、妊娠成立後の人生に役立つからです。
妊娠中は積極的な運動が推奨されるのに、激しい運動は制限されます。
運動として推奨されるのがウォーキングとヨガくらい。
でも妊娠成立からヨガをスタートするのは、本音を言うとお勧めできません。
できれば妊娠前からヨガに取り組んでいた方が安心です。
また、呼吸法は分娩中に大いに役立ちます。
さらに産後もヨガとヨガの呼吸法、そして瞑想法が産後うつや産後クライシスに役立ちます。
もちろん妊娠が成立しなかったとしてもヨガで学ぶポーズや呼吸法、瞑想法は全て実生活に生かせるものばかり。
私たちの人生を豊かにしてくれるのです。
ヨガは妊活の補助とその後のケアに使える
いかがでしたか。
妊娠を希望してヨガをスタートするのは悪くはありません。
でもヨガで妊娠するとは過度に期待せず、あくまでも補助的に使って欲しいと思います。
ヨガで学んだことが日常生活に役立ち、日常生活が整っていくことが何よりも大切です。
そして妊娠してもしなくても、自分は幸せであると感じられることが何よりも大切だと言えるでしょう。