でも右の鼻を使うのか、左の鼻を使うのか、混乱したことはないでしょうか?
ここでは片鼻呼吸の中でも「太陽の呼吸(スーリヤべダナ)」と呼ばれる、右の鼻を特に意識した呼吸法のやり方と、その効果について詳しく解説していきます。
右の鼻と左の鼻、ヨガ的にはどんな違いがあるのかを知ろう
ヨガでは全身が重要ですが、鼻の穴(鼻腔)も非常に重要な器官と教えられます。
私たちの体の中にはナディと呼ばれる「エネルギーの通り道」があるとされ、その通り道は体内に72,000本もあると言います。
これは中医学の「経絡」の考えと非常によく似ています。
ナディは他の臓器のように目で見ることはできませんが、私たちの体の中に確実に存在しています。
72,000本のナディの中でも「スシュムナナディ」「ピンガラナディ」「イダナディ」の3本のナディは非常に重要で、この3本のナディを意識して呼吸法を行うことが推奨されます。
ナディとはエネルギーの道であり、呼吸法を行うことは「プラーナ」と呼ばれるエネルギーを取り扱うことになるからです。
ここからは3本のナディの中でも「ピンガラナディ」についてさらに説明します。
ピンガラナディは、会陰のあたり、ヨガ的にチャクラの名称でいうと「ムーラダーラ」と呼ばれる第一チャクラから、「8の字」を描きながら第二チャクラ、第三チャクラ、第四チャクラを通り、喉のあたりにある第五チャクラを通って、眉間のあたりにある第六チャクラを通るときに、ちょうど右の鼻の穴を通り、眉間でクロスしてさらに左脳を通り、頭頂へ向かうエネルギーです。
一方、「イダナディ」は同じようにムーラダーラチャクラから8の字を描きながら左の鼻の穴を通り頭頂に向かうエネルギーです。
つまり、右の鼻と左の鼻には、それぞれ違うエネルギーの通り道が隠れていると理解できるでしょうか。
右の鼻にある「ピンガラナディ」とはどんなエネルギーの通り道なのか
少々複雑な話になってきましたが、ピンガラナディは右の鼻腔(鼻の穴のこと)を通り左脳に働きかけるエネルギーの通り道ということです。
そもそも左脳には分析力、論理的思考、言語能力などの役割があるとされますが、右の鼻腔にも「男性性」「太陽」「活発性」など動的なエネルギーを司る役割があるとされます。
特に起床後は右の鼻腔が優位になり「男性性」「太陽」「活発性」「フィジカル」といったエネルギーが活発になることで、日中の仕事や運動などが活発に行えるようになるとされています。
私たちの心身の健康状態を保つのに欠かせない自律神経系の中でも「交感神経」と密接に関係しているのも右の鼻腔とされ、起床後、交感神経が優位になることは、ピンガラナディ(右の鼻腔)が優位になることと密接に関係しているとされます。
一方、左の鼻腔は右の鼻腔とは真逆の「静的」で「副交感神経」と密接に関係する働きを司っています。
無意識だと呼吸は左右の鼻腔、交互に行われているはずだが…
私たちは脳に右脳と左脳があり、鼻腔にも右と左があり、神経系にも交感神経と副交感神経がありますが、
- これらがそれぞれどのような役割を果たしているのか
- それぞれがどのようなタイミングで優位になったり低下したりするのか
普段意識せずに生活していることがほとんどです。
しかし、脳科学によって左右の鼻腔は90分交代でどちらかが優位になっていて、そのサイクルが自動的に24時間繰り返されていることが解明されています。
さらに右の鼻腔が優位になっている時には左脳が、左の鼻腔が優位になっている時には右脳が活性していることも報告されているのです。
左右の鼻腔を意識した呼吸法で、右脳と左脳のバランスも整えられる
本来自動的に左右のバランスが切り替わっているとされる「左右の鼻腔」や「右脳・左脳」ですが、私たちの日常生活はストレスフルで常に緊張状態にさらされていたり、あるいは急にやる気スイッチが切れて朝から晩までダラダラとしてしまったり、あるいはアレルギー性鼻炎などを抱えている人も多く、左右のスイッチのバランスが崩れた状態で生活していることが多くなっています。
そこで役立つのが呼吸法。
呼吸法をフル活用し、左右のバランスを意図的に整えることで、脳や自律神経系の乱れの調整につながるのです。
では右の鼻腔を意識した呼吸法を実際に行ってみましょう。
右の鼻腔を意識した片鼻呼吸法「スーリヤベダナ」のやり方
- スッカアーサナ(安楽座)など、楽な姿勢で座ります。
- 目を閉じで呼吸を観察します。右の鼻が優位か、左の鼻の穴が優位か、呼吸の長さや量、呼吸に伴う体の動きを観察してください。ただ観察するだけで何かを変える必要はありません。
- 右手の人差し指と中指を手のひら側(内側)に折り曲げて、親指・薬指・小指だけを立てたら(ヴィシュヌムードラ)、親指を右の鼻腔に、薬指で左の鼻腔にセットします。左手は楽なポジションに置いておけばOKです。
- いったんゆっくり深呼吸をして整えたら、薬指で左の鼻腔を塞ぎ、右の鼻腔から息を吸います。
- 息を吸い切ったら、親指で右の鼻腔は塞ぎ、薬指を離して左の鼻腔からゆっくり息を吐き出します。
- もう一度、薬指で左の鼻腔を塞ぎ、右の鼻腔から息を吸います。
- 息を吸い切ったら、親指で右の鼻腔は塞ぎ、薬指を離して左の鼻腔からゆっくり息を吐き出します。
- ⑥〜⑦を5〜10セット、または3〜5分繰り返します。
厳密には、吸う息の数、吐く息の数、少し息が止まる時(クンバカ)の数をカウントして整えていく方法が正式ですが、ここでは「右から吸って左から吐く」を繰り返すことでこの呼吸に慣れることを最初の目標とし、この練習を続けてください。
慣れてきたら4カウント(秒)で吸って、1カウント止めて、8カウントで吐く、最終的には息を止める時間を12秒くらいまで伸ばしていくように練習をステップアップさせていくと良いでしょう。
もちろん、基本の練習だけでも十分に効果があるので無理をする必要はありません。
右の鼻腔を意識した片鼻呼吸法「スーリヤベダナ」の効果
先に説明した通り、右の鼻腔や左脳には「男性性」「太陽」「活発性」「フィジカル」「交感神経」というキーワードやエネルギーがあります。
スーリヤとは「太陽」の意味ですが、右の鼻腔を活性する呼吸法は「スーリヤベダナ」と呼ばれ、どちらかというと太陽のようなアクティブなエネルギーを活性させる呼吸法ということになるのです。
体が冷える人、エネルギーややる気がわかない時、気持ちが沈んでいる時、集中したい時、あと一踏ん張りしたい時にこの呼吸法を行うと、パワフルに物事に取り組めるようになります。
また、朝起きてこの呼吸法を行うことで、1日を高いエネルギーで過ごせるようにもなります。
まとめ
右の鼻腔にこれだけの秘密があることをご存知だったでしょうか。
私たちは日中ほとんど左脳を使って仕事をしていますが(呼吸は右の鼻腔が優位)、疲れると甘いものが食べたくなったり、自分で考えなくても受動的に情報が入ってくるネットサーフィンなどに時間を浪費したくなったりします。
そのような時にもこのスーリヤベダナをちょっとお試しいただくと、頭がスッキリしてリフレッシュした状態で仕事に戻れるはずです。