みなさんがイメージするヨガとは、少し違った様式かもしれません。
「陰ヨガ」は、私たちの中のある“陰”と“陽”のバランスを整え、深いリラックスを誘い、エネルギーの活性化を促します。
「陰ヨガ」は激しい運動が苦手な方、ヨガの次々変わるポーズについていけなかった方にもぜひ試していただきたいヨガです。
今回は「陰ヨガ」とは一体何なのか、その効果とおすすめのポーズをご紹介していきます。
「陰ヨガ」とは?
ヨガというとどんなものを思い浮かべますか?
次々とポーズを変えていくエクササイズのようなものだと思っている方も多いかもしれません。
実際にはヨガは単なるエクササイズではなく、心地よく瞑想できるようになるための道筋であり、種類は多岐に渡ります。
今回ご紹介する「陰ヨガ」は、ひとつのポーズを数分間キープすることで、身体の深部に働きかけ、芯からリラックスを促すヨガ。“陽”に傾きがちな忙しい現代人の、”陰”と”陽”のバランスを調整していきます。
カラダのどこかに無理があるとポーズを長時間キープすることはできません。
そのため、どのポーズも座ったまま、横たわったままのポーズを「気持ちがいい範囲」で行い、非常にゆっくりと行います。
陰ヨガの効果は以下の通り。
陰ヨガの効果
- 柔軟性を高める。
- 関節や筋膜に働きかける。
- エネルギーの流れが整う。
- ヒーリングやリラクゼーション効果が高い。
一方で、いわゆるハタヨガ、フローヨガ、ヴィンヤサヨガなど比較的運動量が多いヨガは「陽ヨガ」と呼ばれます。
陽ヨガは、陰ヨガと対照的に「一呼吸一動作」で行うのが一般的なリズムです。
例えば「吸いながら腕をあげて、吐きながら腕をおろして」と1つの動作を8〜10秒、長くても30秒程度で、連続してポーズをとっていきます。
- 柔軟性を高める。
- 筋力を鍛える。
- 発汗を促し老廃物の排出を促す。
- 無心になりやすく瞑想状態に入りやすい。
現代人に「陰ヨガ」が必要な理由
「陰ヨガ」の“陰”は、東洋哲学における調和を図る“陰陽”という概念からきています。
“陰”と“陽”は正反対の性質を持ちます。
東洋哲学では、世の中に存在するすべてのコト、モノは、必ず”陰”と”陽”の二つの性質を持つと考えられています。
“陰”と“陽”は、2つで1つです。どちらかが優位になったり欠けたりすると、バランスが崩れると考えられています。
”陰”と”陽”を簡単なイメージと例で表してみました。なんとなく、違いが分かるかと思います。
- 陰:エネルギーを溜め込むイメージ
(具体例)月、静、死、冬、柔、リラックス - 陽:エネルギーを放つイメージ
(具体例)太陽、動、生、夏、硬、エネルギッシュ
“陰陽”のうち、忙しい現代人が意識したいのが“陰”の要素です。
私たちが生きる世界には、“陽”の要素が溢れています。
時間に追われる、欲望が湧く、情報に溢れている…それらはまさに“陽”のエネルギーです。
そんな毎日を過ごしていると、私たちの中で“陽”ばかりが強まってしまいます。
不調が増えてしまうのは、“陽”が増え続け、“陰陽”のバランスが崩れてしまったことが原因かもしれません。
ただし、“陰”の要素は、ただじっと大人しくしていれば増えていくというわけではありません。
そこでおすすめなのが、一つのポーズを数分間キープすることで、“陰”のエネルギーを高めていく「陰ヨガ」なのです。
陰ヨガで得られる8つの効果
「陰ヨガ」で得られる効果は多岐に渡ります。
深くリラックスできる
「陰ヨガ」は、深い呼吸を続けながらじっくり一つのポーズを続けます。
重力に逆らわず、身を任せていくヨガです。
そうすることで身体の奥にある筋肉に加え、関節靭帯、腱などの結合組織にも働きかけ、全身の緊張を取り除きます。
芯からリラックスできるのです。
怒りを手放すことができる
「陰ヨガ」は、怒りの鎮静にも効果的です。
一つのポーズをキープすることは、忍耐力をつける訓練になるからです。
最初のうちは、3分間ホールドするだけでも「まだかなぁ」と非常に長く感じることでしょう。
それを続けていくことで、怒りに支配されない落ち着いた心を保ち続けられるようになります。
疲労感が抜ける
疲れているとついだらだらしたくなりますが、そんな時こそ「陰ヨガ」です。
優しく身体をほぐすことで、疲労感の元凶となる筋肉のコリ、血流の悪化などを改善していきます。
疲労がスッと抜ける快感から「陰ヨガ」にハマる人はとても多いです。
睡眠の質が上がる
深層部にある筋肉や隅々の関節までほぐすことのできる「陰ヨガ」を取り入れると、睡眠の質も高まります。
寝ても疲れがとれない、翌朝すっきり起きられないというお悩みの改善に繋がります。
睡眠の質が上がると、肌の調子が整う、気持ちが安定するなどさまざまなメリットが得られます。
集中力、直感力がアップする
“陰”のエネルギーには、自分に向かうエネルギーを引き寄せる性質があります。
そのため「陰ヨガ」には、集中力や直感力のアップなど内なるパワーを目覚めさせる効果があるのです。
自分の中に眠っている新たな才能を引き出すきっかけになることも。
むくみ、冷えが改善される
ポーズのホールド時間が長い「陰ヨガ」は、深層部の筋肉の緊張をほぐし、血流を良くしていきます。
さらに、深い呼吸を続けることで自立神経のバランスが整うことでも血流の改善が見込まれます。
血流が良くなると、むくみや冷えといった女性に多いお悩みの改善に繋がります。
柔軟性が高まり、日常生活が楽になる
「陰ヨガ」では、関節周りにある靭帯、腱、筋膜などの柔軟性が高まります。
すると、関節の可動域が広がり、身体が柔らかくなることで、日常生活でのあらゆる動きがとてもスムーズになります。
転倒など怪我の防止にもなります。
内臓の機能を活性化させる
長くホールドする「陰ヨガ」は、経絡に圧力をかけることで、内臓機能を高める効果が期待されています。
便秘解消、食欲不振&食欲増進といった不調の改善にもアプローチが可能。
「陰ヨガ」は単なるリラクゼーションにとどまらず、身体の調子を芯から整えるツールなのです。
陰ヨガには向かない人、向かない時がある
「陰ヨガ」は、ここまででご紹介した通り、日々忙しく動き回り“陽”の要素が強い生活を送っているときには非常におすすめです。
しかし、反対に「やる気が起きない」「予定がなく暇を持て余している」といった“陰”の要素が強い生活を送っているときには、「陰ヨガ」を行っても嬉しい効果を感じることができません。
やる気が起きないときには「陽ヨガ」と呼ばれる、筋肉を積極的に使いエネルギーを作り出すヨガを取り入れると良いでしょう。
ヴィンヤサヨガ、アシュタンガヨガなどが「陽ヨガ」に該当します。
ヨガは一つの様式にこだわらず、時間帯や体調、今置かれている状況などによって変えてみるのも良いと思います。
筆者自身、朝は「陽ヨガ」でエネルギーを湧き上がらせ、夜寝る前には「陰ヨガ」で睡眠モードに切り替えることが多いです。(「陰ヨガ」は、眠っていた身体と頭を目覚めさせたいときにも最適なので朝でもOKです!)
気持ちの面では、落ち込んでいるとき、自分と向き合いたいときには「陰ヨガ」を行います。
また、「陰ヨガ」からスタートして身体が心地よくリラックスできてから「陽ヨガ」を始めることもあります。
あらゆる関節が伸び、筋肉もほぐれるので、いつもより伸び伸びとポーズにはいれるのでお気に入りの流れです。
陰ヨガのおすすめポーズ4選
ここからは、「陰ヨガ」のおすすめポーズをご紹介していきます。
まずは1分を目安に、慣れてきたら3~5分間程ホールドしましょう。
バナナのポーズ
バナナのポーズのやり方
- マットの上に仰向けに寝たら、両足をマットの右側に移動し、左足を右足首の上に重ねておく。
- 両腕はバンザイしたら右手で左手首をとり、左腕を気持ちのいい範囲でやや右に引いておく。
- このまま3〜5分キープしたら反対側も同様に行う。
スフィンクスのポーズ
スフィンクスのポーズのやり方
- うつぶせになり、両脚を並べ後ろに伸ばし、お尻を軽く締めます
- 脇を締め、肘から下の前腕を床の上に置き、軽く上体を反らせ目線を前へ送ります
- 下腹部を軽く床から持ち上げ、背中を反らせます
- 胸を開き、心地の良いところでホールド
- 息を吸いながらゆっくりと力を緩め、額を床まで下ろします
蝶のポーズ
蝶のポーズのやり方
- 膝を曲げて、足裏同士をつけて座ります。左右のお尻に均等に体重がのるようにします
- 息を吐きながら、背中をできるだけ平らに保ちつつ、無理のない範囲で前屈します
- 額がちょうど足の上にくるように、脚と身体のひし形の空間を調整します
- 肘をすねの外側の床に下ろし、手は合掌します
- 無駄な力を抜き、ホールドします
- 息を吸いながらゆっくり上体を起こし、股関節を緩め、楽な姿勢で休みます
靴紐のポーズ
靴紐のポーズのやり方
- 横座りで座ります。上半身には力が入らないようにします
- 片足を反対側に移動し、両膝が重なる位置に調整します
- 左右のお尻に均等に体重をのせます。(お尻が浮いてしまう場合は、ブランケットをお尻の下に敷きましょう。)
- 息を吐きながら、出来るだけ背中を丸めずに前屈します
- 手は床か、左右の足の上に軽く置いておき、ホールドします
- 息を吐きながら、上半身を戻し目線を前へ。ゆっくり足をほどきます
陰ヨガの大事なポイント、注意点
「陰ヨガ」の効果を十分に得るために、いくつかのポイントをおさえておきましょう。
深い呼吸で行う
深く長い呼吸を常に意識しましょう。
深く長い呼吸がうまくなっていくと、ホールドの時間も短く感じられるようになっていきます。
息をしっかり吐き切ると、呼吸が深まりやすくなります。
違和感がないか確認する
一つのポーズを数分間続けるためには、どこにも負担がない状態でいなくてはいけません。
突っ張るなどの違和感がある場合は、足や手の位置を調整する、もしくはブロックやボルスター、ブランケットなどで高さを調整しましょう。
重力に身を任せる
「陰ヨガ」は、力を抜いて行うことが大事です。
力まずに、重力に身を任せましょう。
特に前屈の際には、頑張って深く倒れる必要はありません。
脱力して地球に引っ張られるイメージを持ちましょう。
「陰ヨガ」で生活の質を上げよう
ストレスや緊張の多い毎日を過ごしているなら、ぜひ「陰ヨガ」を試してみてください。
今の自分と向き合うことができ、心身共にバランスの良いベストな状態を目指せます。
初めは集中力が続かないかもしれませんが、慣れてくるとリラクゼーション効果の高さに病みつきになってくるはず。
生活の質そのものを上げたい方にも、おすすめのヨガです。