あらゆる身体の不調が軽減され、精神的にも強くなることができる至極のメソッドです。
ただし、お腹をうねうねと自在に動かすのは、ヨガを行っている人にとってもそう簡単ではありません。
「ナウリ」は、ヨガの世界を極めた人のみが会得できるものなのです。
一体「ナウリ」とは、どのような仕組みでどのような効果があるのか。
「ナウリ」の気になるやり方も詳しくご紹介していきます。
ナウリは最高峰の浄化法・呼吸法!
ヨガには、ウジャイ呼吸、片鼻呼吸(ナーディショーダナ)、カパラバティ呼吸、シータリー呼吸などさまざまな呼吸法がありますが、中にはヨガを長年続けていくことでしか到達できない呼吸法があります。
今回ご紹介する「ナウリ」もその一つ。
片岡鶴太郎さんが、インド政府公認「プロフェッショナルヨガ検定・インストラクター」合格会見の時に披露したことで話題になった、あの不思議なお腹の動きです!
お腹をうねうねと波打たせる姿は、多くの視聴者を驚かせたことでしょう。
ナウリ(nauli)は、サンスクリット語でうねりという意味があります。
ナウリクリヤー(nauli kriya)と呼ばれることもあります。Instagramでも「# nauli」や「# naulikriya」と検索すると、ヨガ愛好家たちの素晴らしい「ナウリ」がたくさん見られます。
お腹自体が生き物かのように前後左右に動く動画は、思わず目を奪われます。
気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
お腹が波打つのは、内臓の位置を引き上げて呼吸を行っているから。
ヨガは自身の身体と心をコントロールするメソッドですが、「ナウリ」は内臓の位置までもコントロールするという域に入ってきます。
内臓を動かした結果、腸が活性化され、身体がリセットされます。
「ナウリ」は、単なる呼吸法ではなく、一種の浄化法だと捉えられています。
「ナウリ」の前段階にあるのが、お腹を締めるウディヤナバンダというメソッドです。
アーサナの安定にも役立つテクニックの一つ。
ウディヤナバンダを使ったうえで、お腹の筋肉を波打つように動かすのが「ナウリ」です。
ヨガに重要なバンダとは?
バンダは、サンスクリット語で「締める、縛る」といった意味がある言葉です。
ムーラバンダ、ウディヤナバンダ、ジャーランダラバンダの3つに分類され、それぞれ特定の場所の筋肉を使って締め付けることを指します。
ヨガの3つのバンダ
- ムーラバンダ:会陰部の締め付け
- ウディヤナバンダ:下腹部の締め付け
- ジャーランダラバンダ:のどの締め付け
「ナウリ」に関係しているウディヤナバンダは、おへその下あたりをギュッと締め付けるテクニックです。
練習をして取得するというよりは、呼吸を意識したアーサナをしっかりと続けていくうちに自然と身についていくものだと思います。
バンダを取り入れる理由は、主に二つあります。
一つは、解剖学的に見てアーサナの安定に繋がるから。
バンダを使えるようになると、ダウンドッグが長く快適にホールドできるようになったり、難易度の高いアーサナを行えるようになったりします。
もう一つは、生命エネルギーを内側で増やすため。
ヨガの八支則では、アーサナ(座法)の次の段階であるプラーナーヤーマ(調気法)で、呼吸によってプラーナ(生命エネルギー)をコントロールせよと示されています。
このとき、バンダを使って内側で締め付けることで、プラーナ(生命エネルギー)の流れを体外に漏れないようにするのです。
そのエネルギーを体内に留めて、内側で増やしていくイメージです。
ナウリの効果
ナウリは、ヨガの世界では非常に優れた浄化法だと考えられています。
具体的な効果を見ていきましょう。
ナウリで期待できる効果
- 消化不良の改善
- 便秘の改善
- 内臓下垂の改善
- 乱れた自立神経の改善
- 生命エネルギーの強化(集中力、直感、感度、気力などがアップ!)
自覚しにくいものもありますが、それぞれ身体に以下のような変化があります。
当てはまるかどうかチェックしてみましょう。
- 消化不良:胃が重い、ゲップがでる、食欲が湧かない
- 便秘:お腹が重い、身体全体がだるい、おならがクサイ、肌が荒れる、太りやすい
- 内臓下垂:下っ腹がぽっこり出やすい、便秘になりやすい、むくみやすい
- 自立神経の乱れ:イライラする、眠りが浅い、疲れやすい
- 生命エネルギーの低下:やる気が湧かない、集中力がない、良いアイデアが浮かばない
いかがでしょうか?多くの現代人が抱えている不調ではないでしょうか。
このような不快な状態を「ナウリ」によって改善できれば、今までに味わったことのない爽快な自分に出会えます。
「ナウリ」の効果は、精神面にも現れます。
バンダを使い自分の身体をコントロールする高度なメソッドを取得していく過程によって、精神が統一されていきます。
ヨガの最終目的である、瞑想や三位一体に通じる道でもあります。
ナウリの仕組み
ナウリは内臓の位置を引き上げる呼吸法です。
ではどうやって内臓の位置を引き上げるのかというと、腹式呼吸をするときに使われる横隔膜という筋肉を動かすのです。
横隔膜は、肋骨の底辺をドーム状に張っている筋肉で、息を吸うと位置が下がり、息を吐くと位置が上がります。
そして、息を吐き切り横隔膜が高い位置にくると、内臓も引きあがり、同時にお腹が凹みます。
その際、胸式呼吸ではなく、腹式呼吸でないと横隔膜は動きません。
これが、「ナウリ」ができる身体の仕組みです。
つまり、まずはヨガのプラクティスで腹式呼吸を続け、横隔膜をしっかり動かせるようになることが大事なのです。
→ヨガの基本「腹式呼吸」とは?効果・メリット・練習方法を徹底解説
ナウリを行う注意点
「ナウリ」は、お腹の筋肉や内臓の位置をコントロールする高度なテクニックです。
いきなり自己流で行うと、気持ち悪くなってしまう可能性があるので、始めはプロの指導の元でチャレンジすることをおすすめします。
女性の場合は生理中、妊娠中には行わないようにしましょう。
「ナウリ」の前段階であるウディヤナバンダも、下腹部を締め付けてしまうので辞めましょう。
また、お腹の調子が優れないとき、気分が悪いときにも行わない方が良いです。
一部メディアでは「ナウリ」を「内臓はがし」と呼び、健康法の一つとして紹介していますが、真似してお腹を無理に凹ませるには、内臓を過剰に刺激することになるので危険です。
あくまで「ナウリ」はヨガの鍛錬の先にあるもの。
安易な気持ちでトライしないことをおすすめします。
ナウリのやり方
空腹状態を保つ
片岡鶴太郎さんの「ナウリ」の動画を見たことがある方は、まずそのお腹の凹み具合に驚いたことでしょう。
彼に限らず、「ナウリ」を行う世界中のヨガ愛好者の動画を見ると、お腹はペタンコの状態です。
「ナウリ」は、お腹をぐねぐねと動かす動きなので、胃の中が空っぽである必要があります。
胃の中に食べ物が残っていると、逆流して気持ち悪くなってしまいます。
下腹部を締めるウディヤナバンダを行うときにも、空腹であることが必須です。
では、「ナウリ」を行う前だけ空腹にすれば良いかというと、そうではありません!
1食だけ食事を抜いても、私たちの胃はまだまだ膨れたままです。
大事なことは、普段から満腹になるまで食べすぎない食生活を送ることです。
これはヨガの八支則の教えからも分かります。
十分に足りていることを自覚し、必要以上に欲しがらない信念を持ちましょう。
(サントーシャ/知足)また、時には断食をしたり、お酒やスイーツ、ジャンクフードなど美味しいけれど身体に悪いものを断ち切る生活を送ったりすることも大切です。
(タパス/苦行)腹八分目という言葉がありますが、腹七分目くらいでも運動量の少ない大人であれば活動的に生きていけます。
ウディヤナバンダを練習する
「ナウリ」の前に取得すべきウディヤナバンダは、内側から下腹部を締めることでアーサナを安定させることができるテクニックです。
お腹の引き締めにも高い効果があります。
多い間違いは、お尻をギュッと硬くして、腹筋に力を目いっぱい入れて…というやり方。
それでは、身体の表面にある筋肉しか使われていません。
ウディヤナバンダでは、内側で締める感覚を大事にします。
お腹は凹んだ状態になりますが、固め過ぎず緩めておきましょう。
ウディヤナバンダの練習法1:ダウンドッグのポーズ
やり方
- ダウンドッグのポーズで、おへそをぐっと背骨のほうに凹ませていきます。
- 内臓がぎゅっと詰ってしまわないように、背面をリラックスさせ、お腹を長く保ちます。
- 息を吐くときに、横隔膜が上がり内臓も引きあがるので、力強く長く息を吐いていきましょう。
- 横から見て、下腹部が薄くなっているかどうかチェックしましょう。
→ヨガのダウンドッグとは?5つの効果と正しいやり方を徹底解説
ウディヤナバンダの練習法2:お腹の圧を高める
ダウンドッグのポーズでウディヤナバンダを使う感覚が掴めない方は、まずは腹圧を高める練習をしてみましょう。
やり方
- 仰向けに寝ます。
- おへそを床に近づけるイメージで呼吸をします。
- 背中と床の隙間を無くしていきます。
腹直筋を前に出す
ウディヤナバンダができるようになったら、「ナウリ」の練習ができるようになります。
バンダを使った状態で呼吸をコントロールし、お腹を動かしていきます。
立位でも座位でもトライすることができますが、座位の方法をご紹介します。
腹直筋を前に出す方法は、感覚的なものなのでレクチャーが非常に難しいですが、自身のお腹を見ながら動かしてみましょう。
やり方
- 膝を開いた正座で座ります。骨盤をしっかり立てます。
- 深い呼吸を繰り返し、横隔膜を柔らかくします。
- 両手を膝に置き、少し背を曲げて前かがみになります。目線はお腹へ。
- 呼吸と共にウディヤナバンダを行います。肋骨が浮き出るくらいお腹が凹んでいたら準備完了です。
- 息をほとんど吐き切った状態で、浅めの呼吸をし、横隔膜を動かして腹直筋を前に出します。
- 5を何度かできるようになったら、横隔膜を細かく動かしお腹をうねらせます。
ナウリで最高の浄化を体験!
ヨガに長年親しんだ方なら、一度は気になったことがあるであろう「ナウリ」についてご紹介しました。
「ナウリ」はレクチャーによってすぐにできるようになるものではありません。
それ以前に会得すべき精神的な学び(求めすぎず空腹を保つこと)や、肉体的な鍛錬(プラクティスを繰り返すことによりバンダを極めること)が必要です。
その先には、究極の浄化体験が待っています!
ぜひコツコツ続けて、ヨガの高みを目指してみてください。