ヨガは身体だけでなく、私たちの心にも大きく作用してくれます。
ヨガは、単なるエクササイズではないのです。
特にヨガの教えである「八支則」には、心から幸せになるための哲学が詰まっています。
哲学というと難しく感じるかもしれませんが、誰もが納得できる幸せになれる生き方の基本的が説かれています。
ヨガの「八支則」を覚えておくと、幸せについてより深く知ることができ、幸せにより近づくことができるので、ぜひ実践してみてください。
幸せとは?
まず始めに、あなたにとっての幸せとは、幸福とは何でしょうか?
お金持ちになること、仕事で成功すること、羨ましがられる私生活を送ること、他人から愛されることなどが浮かぶ方も多いかと思います。
そもそも幸せとは、どのような状態を指すのでしょうか?
Oxford Languagesの定義では、
- こうふく【幸福】恵まれた状態にあって、満足に楽しく感ずること。しあわせ。
広辞苑の定義では、
- こうふく【幸福】心が満ち足りていること。また、そのさま。しあわせ。
とあります。
幸福という言葉を聞くと、物欲や食欲、所有欲といった欲望を満たすことで得られる幸せを結び付けてしまいがちですが、実は幸福を得るには“満足”がキーワードであることが分かりますね。
恵まれた状態にあっても、それに気が付かず心が満たされていなければ、いつまで経っても幸福にはなれません。
お金については、年収800万円以上からは幸福度が横ばいになるという世界的に有名な研究結果もあります。
財産や持ち物では幸せにはなれないのです。
むしろそういったモノに執着してしまうと、本当の意味での幸せが遠のいてしまうことさえあります。
他人と比べることで得られる優越感からくる幸せならば、その先には焦りや嫉妬、劣等感が待っています。
では、ヨガの世界においてはどのような状態を幸福と呼ぶのでしょう。
ヨガ哲学における幸福とは?
ヨガは、呼吸とともにポーズをとることというイメージが強いかと思います。
しかし実際には、ヨガとは心と身体をコントロールして幸せになるための哲学のようなものです。
ヨガの教えである「八支則」において、ポーズをとることは、瞑想を深め、悟りを開く境地を目指すための一つのステップにすぎません。
八支則は「ヤマ」「ニヤマ」から始まり、次に「アーサナ(=ヨガポーズをとること)」が続きます。
本来は、始めの「ヤマ」「ニヤマ」を実践できて初めて、ポーズをとるステップに進めるのです。
最終的には「サマディ」へと向かいます。
「サマディ」は、日本語では「悟り」「三昧」「超意識」などと訳されます。
深い瞑想状態になることで、集中するものと一体になり、宇宙そのものと繋がるという考え方もあります。
さまざまな解釈がなされていますが、筆者は「サマディ」をこのように捉えています。
- 雑念や執着を手放した状態
- 心が平静である状態
- 真実の自分でいる状態
- 幸せで穏やかな状態
「サマディ」で得られる幸福感や精神的な喜びは、私たちが日常生活で嬉しいことがあったときに「幸せ!」と思うそれとは大きく異なります。
一時な幸せではなく、長く穏やかに続くものです。
また、「私はあの人より綺麗で恋人もいるから幸せ」「出世したから幸せ」などと、競争や他人との比較で感じられるものではありません。
心の中のざわめきをなくし、欲望や執着から離れ、フラットな視点で真の自分を見つめることで、ゆるぎない幸福な状態を手に入れることができるのです。
一般的な幸福とヨガ哲学における幸福の違い
- 欲を満たした状態/欲を手放した状態
- 一時的なもの/長く続くもの
- 他と比べて感じるもの/自分の中にあるもの
ヨガ哲学で幸せになる!八支則の「ヤマ」「ニヤマ」
「サマディ」という究極の幸せな状態に辿り着くには、「八支則」を一つずつクリアしていく必要があります。
まずは、ポーズを始める前に行うべき「ヤマ」「ニヤマ」です。
「ヤマ」は日常生活の中で禁じた方が良いこと、「ニヤマ」は日常生活の中で進んで行うべきことを示しています。
考え方や暮らしそのものを整えるための、計10個の教訓です。
まさに私たちが幸せを手にするために忘れてはならない教えだと思います。
筆者も初めてヨガ哲学を勉強した際には、ハッとさせられました。
この教えを守らずして、深い幸せな状態「サマディ」には辿り着けないのです。
ヤマ(禁ずること)
アヒムサ:非暴力
- 身体的暴力はもちろん、言葉の暴力も禁止。
- 自分自身に対してもアヒムサでなければなりません。
サティヤ:正直
- 嘘をつかないこと。正直で誠実であること。
- 他人にはもちろん、自分の心にも正直であることが大切です。
アスティヤ:不盗
- 盗まないこと。人の時間や空間、立場なども奪ってはいけません。
- 自己中心的な考えを捨てましょう。
ブラフマチャリア:禁欲
- 自己の利益ばかりを求めない。欲を持ちすぎないこと。
- 欲のエネルギーは大きいので、欲があると大切なことにエネルギーが注げなくなります。
(従来は、ヨガの鍛錬のために性欲を断つことを意味していました。)
アパリグラハ:非所有
- 必要以上に所有しないこと。貪欲さを捨てること。
所有するモノが多すぎると、本当に大切なものが見えなくなります。執着も生まれてしまいます。
ニヤマ(進んで行うべきこと)
シャウチャー:清浄
- 身体を清潔に保つこと。身の周りを整えること。
- 心も清潔であるためには、嫉妬や嫌悪といったネガディブな感情に振り回されないことです。
サントーシャ:知足
- 今あるものに感謝をすること。満たされていることに気が付くこと。
- 十分に足りていることを認識し、それ以上に求めないことが大切です。
タパス:苦行
- 苦行に耐え、悪い習慣を焼き払うこと。どんなときも努力を怠らないこと。
- 人生で起こる困難や試練を受け入れ、良い方向へ変えていく力を持ちましょう。
スワディヤーヤ:読誦
- 経典を読み、知識を得ること。学びを自らの知恵に変えること。
- 今の時代で言えば、正しい知識を得るために本を読む学び続けることです。
イシュワラプラニダーナ:神性への祈念
- 信仰心を大切にすること。神に献身的に生きること。
- 無宗教である場合は、自分の中にある神聖なものを信じることでも良いと思います。
- 自分の力ではどうにもできないことを受け入れて、運に身を委ねましょう。
このあと、「八支則」は以下のように続きます。
アーサナ(座法)
ヨガのポーズのこと。
自分自身の身体をコントロールします。
プラーナヤーマ(調気法)
呼吸法のこと。
生命エネルギーである「プラーナ(=呼吸)」をコントロールします。
プラティヤハーラ(制感)
意識を内側に向けて、感覚をコントロールすること。
本当の自分を深く見つめます。
ダーラナ(凝念)
集中し、維持すること。
心を一点に集中させ、そこに向かうエネルギーを強化します。
ディヤーナ(瞑想)
プラティヤハーラとダーラナが深まることで、雑念がなくなり、瞑想状態に入ること。
自分と他という意識の境界線がなくなっていきます。
サマディ(悟り)
ディヤーナを長く続けることで得られる悟りの境地。
アシュタンガ(八支則)の最終段階です。
ヨガで幸せになれる理由
ヨガをしているけれど、ヨガ哲学については詳しく知らない、瞑想には正直あまり興味が湧かないという方もいることでしょう。
それでも大丈夫!誰でもヨガで幸せになることができます。
それには以下のような理由があります。
幸せホルモン(セロトニン)が分泌される
呼吸と共に連続したポーズをとるヨガのアーサナは、幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促してくれます。
セロトニンが分泌されると、精神が安定し、安心感や平常心を得ることができます。
不安感がある方にも、ヨガのアーサナはとてもおすすめです。
リズミカルな軽度な運動をすることがセロトニン分泌に必要な要素なので、ぜひ一つのポーズで終わらせずに、15分以上はヨガを続けてみてください。
自律神経が整う
ヨガで行う深い呼吸は、乱れた自律神経を整えるのに効果的です。
交感神経ばかりが優位になっていると、緊張状態が続き、小さなことでイライラし、怒りの沸点が低くなってしまいます。
当然、“今ある当たり前の幸せ”にも気が付くことができません。
自律神経は呼吸と深い関りがあり、深呼吸をするだけで副交感神経を優位にすることができます。
→自律神経を整えるために効果的なヨガポーズ3選!ダルい、眠れないは自律神経失調性かも?
睡眠の質が高まる
ヨガをすると乱れていた自立神経が整い、さらに適度な疲労を感じます。
すると、睡眠の質がぐっと高まります。
筆者のヨガクラスの生徒さんからも、「ヨガをした日はぐっすり眠れます。」「気づいたら朝でした!(眠りが深い)」「朝、目覚まし時計なしで起きられるようになりました。」といった声をよく耳にします。
睡眠の質が良くないと、小さなことでイライラしたり、泣きたくなったりすることがありますよね。
反対に睡眠の質が上がれば、穏やかな気持ちで日々を過ごせるようになります。
また、よく眠れている方はむくみがなく、すっきりとしていて、目がキラキラとしているものです。
睡眠がきちんととれると、周囲から見ても分かるような幸せオーラに直結します。
快適な身体を手に入れられる
幸福は、健康な身体なしでは感じることはできません。
すぐに疲れてしまう、風邪をひきやすい、痛みがある、身体が重いという状態では、笑顔や喜びが減ってしまうものです。
ヨガは軽度なエクササイズに感じるかもしれませんが、実は身体の安定に重要な下半身や体幹を強化することのできるメソッドです。
疲れや痛みの原因になる歪んだ身体を調整するのにも効果的です。
続けていけば、不調に振り回されることのない快適な身体を手に入れることができます。
ヨガは10年後、20年後の身体も変えてくれます。
タフな身体の持ち主は、年齢を重ねても幸福を感じやすいはずです。
ヨガ哲学で幸せになろう!
ヨガ哲学である「八支則」には、欲望やマウンティングに溢れる現代社会を生きる私たちが思い出すべき、幸せになるヒントが詰まっています。
ヨガをしている方はもちろん、そうでない方でも、心に留めておくだけで真の幸福に近づくことができますよ。
ヨガのアーサナ自体にも、幸せになれる要素がたくさんあります!
ぜひ長く続けて、心と身体の前向きな変化を感じてみてください。