高齢になると後ろに転びがち?足指を鍛えて転倒を予防しよう

「高齢者 転倒」と検索すると「頭を打つ」とサジェスチョン(暗示)されるほど、高齢者は尻餅をつくように後ろに転びがちなことをご存知でしょうか?

子育て中の方は、前に転ぶときに「手をつく転び方」を子どもに教えたことがあると思いますが、高齢者の場合どういうわけか後ろに転びがちです。

本記事では、高齢者の転倒の原因と転倒予防のためにヨガができることについて詳しく解説していきます。

転倒は寝たきりリスクを増大させる要注意アクシデント

転倒は寝たきりリスクを増大させる要注意アクシデント

一般的に65歳以上になると、「転倒」には徹底的に注意すべきとされます。

家の中のわずかな段差やコード、床にたまたま置いてあったビニール袋や新聞紙にさえつまずき、転倒するケースが急増するのが65歳以降だからです。

「令和元年国民生活基礎調査(厚労省)」によれば、高齢者の介護が必要となる要因は「1位認知症、2位脳血管疾患、3位高齢による衰弱」で、「4位転倒・骨折(12.5%)」と続きます。

ちなみに令和元年の高齢者の転倒による死亡は約87,000人を超え、交通事故死の3倍にもなっているのです。

高齢になると転倒が増える原因は「加齢による筋肉や骨密度の低下(いわゆるフレイルやロコモティブシンドローム)」「病気や薬の影響(ふらつき)」と分析されていますが、ヨガインストラクターとして体を見る立場から考えると、「重心が崩れている」ことが最大の問題だと感じます。

バランスの崩れは胸の猫背からはじまる

バランスの崩れは胸の猫背からはじまる

高齢になると、誰でも猫背になりがちです。

左右に開いていた肩は内側に丸く入りこみ、鎖骨が短くなって、胸が閉じで呼吸が浅くなります。

そのため常に酸素不足に陥り、集中力が低下する、動くとすぐに息が切れるといった症状が現れます。

首も前に倒れるので、首の後ろが伸びきって首こりや肩こりが起こりやすくなり、顎や頬を中心に顔も下垂(たるみ)するだけでなく、耳たぶや鼻下が伸びて顔にも変化が現れます。

さらに、首や肩が前に倒れて猫背が体の上部に起こると、稲穂のように垂れ下がる頭部を支えるために、腰のあたりは後ろに引っ張られ腰がどんどん丸くなり腰痛が起こります。

腰が丸くなると、前側にある内臓、中でも腸は圧迫され、動きが悪くなって便秘が起こり悪玉菌が増えます。

膀胱は圧迫されることで尿を溜めておく力が弱り頻尿になります。

体の前側がどんどん縮んでいくことで全身の血流はどんどん悪くなり、自律神経系の働きも崩れさまざまな疾患の原因となります。

猫背は百害あって一利なし!全身に恐ろしいほどの悪影響を及ぼすので今すぐ直すべき、と思います。

しかも、猫背の問題は上半身のトラブルに留まりません。

下半身にも大きな悪影響を与えるのです。

猫背で前屈ぎなのに後ろに倒れやすい高齢者

猫背で前屈ぎなのに後ろに倒れやすい高齢者

体が猫背になって、前屈みが進んでいくと頭が前にあることから足の重心は前に行くと思われる人が多いのですが、これは大きな誤解です。

高齢になると、前に転倒するより後ろに転倒する人の方が圧倒的に多くなります。

もちろん、手を前について転倒できる高齢の方もいらっしゃいますが、この方々が転倒しても最悪手や腕の骨を折ることはあってもそれで寝たきりまで進むことは少ないです。

問題は、どすんと尻もちをつくか、まるでバナナの皮を踏んで滑る時のようにつるんと後ろに倒れるケース。

これは、当たりどころが悪ければ死に直結する転倒です。

また、介助する人たちも、仰向けに近い状態で転ばれると起こすのも一苦労。

手を前について転べるのであれば、まだ体が若いサインと考えて良いかもしれません。

では、なぜ高齢者は前屈みで上半身の重心は前に傾いていくのに、後ろに倒れやすいのでしょうか?

高齢者だけでない!前屈みになると後ろ重心になりがち!

高齢者だけでない!前屈みになると後ろ重心になりがち!

立っている時、前重心になった体が前に転ばないように懸命に支えてくれる場所はどこだと思いますか?

正解は足指です。

ヨガのクラスでよく行う半分の前屈ポーズ(アルダウッターナアーサナ)をしてみてください。

このポーズは踵の上にお尻を持ってくることがポイントですが、多くの人が最初は「踵重心」になってしまいます。

そのため、踵よりだいぶ後ろにお尻がくる(つまりへっぴり腰)になりがちです。

健康な私たちでも、このポーズ(上半身の前重心)をするとどうして踵重心になりがちです。

なぜなら、足の指を開いて下半身の重心をつま先方向に分散する力が非常に弱いから。

足の指側より踵の方が地面に着地させやすいからです。

ですから、このポーズをするときに踵重心になっていると感じる人は、高齢になった時に後ろに転ぶ予備軍だと自覚しましょう。

私のクラスではこのポーズの練習時、足指の前にブロックをセットし、踵の上にお尻が来るようにつま先側にも重心を移し、足裏の3点(母指球=親指の付け根、小指球=小指付け根、踵の中心)でバランスを取る練習を繰り返します。

さらに足指は1本1本大きく開いてパーにすることで、土踏まずを引き上げる力を作り、つま先重心に移動しても前にひっぱられないようにする足裏&足指力をつける練習もしています。

つまり、足指を開いて地面を掴むような「踏ん張る力」がないと、ほとんどの人は上半身が前かがみになった時に下半身は後ろ重心になってしまうのです。

するとどうでしょう…体を前屈みにして踵重心になると、前から肩先をつんとつつかれるだけでも後ろに転倒しそうになるはずです。

後ろに転倒しないようにブレーキをかけられたとしたら、それは足指でキープできたからではないでしょうか。

アルダウッターナアーサナ足指と足裏の3点で重心を取ることで、踵の上にお尻を持ってきて前にも後ろにも倒れない状態を作っているポーズ。

踵重心になると「すり足になる」

踵重心になると「すり足になる」

もう一つ、高齢者がつまづきやすい原因に「すり足」があると思います。

足をきちっと持ち上げず、小さい歩幅でするように歩く高齢者特有の歩き方です。

なぜすり足になるのかという点も、足指と大きく関係しています。

試しに、その場で足指を軽く上に持ち上げて(地面から離す)歩いてみてください。

年齢に関わらず誰でもすり足になってしまいます。

足の指を使わないと、すり足でないと歩けなくなってしまうのです。

本来、歩行時の足の指は下に向けて大地を掴むようにしながら蹴り上げる役割がありますが、ほとんどの人がその役割を知らずに放置し、ほとんど使うことさえありません。

私のクラスではゴルフボールを足指で掴んで持ち上げるというウォームアップをほぼ毎回行ってもらっていますが、これも足指の力を鍛えるのに非常に有効なのでぜひ取り組んでみて欲しいと思います。

まとめ

高齢になると後ろに転びがち?足指を鍛えて転倒を予防しよう

他にも足指と手指で握手をして足指を根元からよく回す・足首をよく回す・足指同士を握手させる、足裏をよくほぐす、このようないつでもどこでもできる簡単なウォームアップも、実は非常に有効です。

これらのウォームアップは若いうちには「誰でもできる」簡単なことですが、しないうちにとどんどんできなくなり、できなくなった時には「よくつまづくな」「膝が痛いな」「足裏が痛いな」「股関節が痛いな」「坐骨神経が痛いな」と、さまざまな不調の要因になっていくのです。

できるうちにせっせと足指を使い、足裏を鍛えて、転倒リスクから自分やご家族を守ってください。

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