ただ立つだけのポーズでしょ?と思われている方も、これを読めば毎日実践したくなるはず。
誰にでも簡単に取り組めるのに、「真剣に行ってタダアーサナだけでも極めれば、大袈裟ではなく人生が変わる」そんな素晴らしいポーズです。
そもそも正しい立ち方を知っていますか?習ったことはありますか?
タダアーサナは「山のポーズ」とか「サマスティティヒ」といった別名を持ちますが、要するに「ただ真っ直ぐに立つ」だけのポーズです。
ただし「山のポーズ」という名称からは、その名の通り「堂々と」「どっしりと」「美しく」立つことがイメージされますし、サマスティティヒとはサンスクリット語で「均一な」「安定」といった意味があるので、安定して立つことが目指されます。
ヨガのポーズにはアライメントといって、骨や筋肉のあるべき向きや方向性が定められていますが、タダアーサナのアライメントにはざっと15ポイントくらいあり、一つ一つを実践すると立つことがいかに難しいかに気がつくはずです。
さて、皆さんはどれくらい「どっしりと」「美しく」「安定して」立つことができるでしょうか。
私はこの「タダアーサナ」こそ、数あるヨガポーズの中でも最も難しいポーズのひとつだと感じています。
それくらい「どっしりと」「美しく」「安定して」立つことは容易ではありません。
まずは自分なりにタダアーサナのポーズをやってみてください。
わずか数秒でも、足元がおぼつかなかったり、体が揺れたり、なんだか不恰好になったり…。
そもそも正しい立ち方って、これまでちゃんと習ったり学んだりしたことがなかったかも!と思うのではないでしょうか?
アライメントを意識してみよう!タダアーサナの正しい実践、やり方
ではさっそくタダアーサナをやってみましょう。
以下の手順で行ってみてください。
やり方
- マットに立つ
- タダアーサナは足元から作っていくがまずは足と足の間隔を坐骨幅にセット(踵が少し離れる)する
- どちらの足も足裏の4点(両踵と母指球・小指球)に均等に体重をかける
- さらに足指を一旦全部持ち上げて、指と指をしっかり開くように1本ずつ降ろしていく
- 次に両踵を持ち上げてゆっくりと床の上に降ろし、もう一度体重を足裏の4点に均等にかけていく
- 膝をまっすぐ正面にむける(これが案外難しい)
- 太ももは外まわしにしつつ内腿同士は引き寄せる
- 下腹を引き入れながら3つのバンダを入れる
- 胸を引き上げる
- 背骨を伸ばして健康骨、鎖骨、肩は下げる
- 坐骨を下に向け腰を立てる
- 下腹を引き締める
- 両手は両腿の横につけて伸ばす(脇を閉める)
- 指先は地面に突き刺すイメージで長く伸ばす
- 顎を引いて首の後ろも背骨につなげて長くし、頭頂は引き上げられるイメージ
以上のことに気をつけて、ポーズが完成したら、どこか1点を見つめ1〜3分呼吸を止めずにキープします。
15点もの場所に気をつけながら安定して姿勢をキープするのは容易ではありませんが、これをするだけで骨格の歪みやバランスの悪い場所に自ずと気がつき、毎日繰り返して練習すれば自然に正しい姿勢が身につく素晴らしいポーズです。
他にも骨盤底筋を鍛える、脚のラインを美しく整える、リラックスなど色々な効果が得られます。
ヨガのポーズはほぼ全てタダアーサナに始まり、タダアーサナに終わるので、その都度丁寧に行えば、1回60分程度のレッスンでも20回くらいはタダアーサナを練習できるはずです。
タダアーサナで「ただ立つだけ」の難しさ、ありのままを認める難しさに気づく
このポーズをしていると、ただ立つことがいかに難しいかに気がつくだけではなく、ヨガウエアというシンプルな服装で、バックやハイヒールもなくただまっすぐ立つだけという姿勢に、なんとなく心細さや居心地の悪さを感じたりもするのです。
自分の骨格やボディライン以外頼れるものがなく、ただまっすぐ立っている自分を自分自身が直視するのは、なんとも無防備で心細く、また自分のコンプレックスやウィークポイントとも向き合うことになります。
私はこのタダアーサナを自分のクラスで行うときに、アライメント(先の1〜15)だけでなく、「ただまっすぐ立っているだけの自分を心の目で見てください。かっこよく、堂々と立てていますか?ただ立っているだけで、何も持っていない自分でも好きかどうか自問してください」と誘導することがあります。
普段私たちは、おしゃれな服装やハイヒールで体型を細かしたり、脚が長く細く見えるようにクロスしてポーズを取ったり、つま先立ちになったり、アプリで写真を加工したりして、少しでも自分をよく見せようとしたり、ありのままの何も持たない自分から離れようとします。
しかし、本当は何も持たないありのままの自分を自分で好きになれるのが一番良いはずです。
タダアーサナはそんなことまで気がつかせてくれるのです。
太陽礼拝などの別のアサナと組み合わせて、もう一度タダアーサナをやってみる
最初にタダアーサナをしたときにはおそらく居心地の悪さやバランスの悪さを感じるはずですが、太陽礼拝などを行いながら、何度もタダアーサナを意識し、体をある程度他のポーズで動かした後の最後にもう一度タダアーサナをじっくり時間をかけて行いましょう。
すると、最初よりも立ちやすくなっていたり、居心地の悪さや不安定さが消失していたりします。
目を閉じてもフラフラしなくなったり、堂々と立っていられるようになるのです。
これはヨガの効果の表れです。
タダアーサナで日々の生活を見つめなおそう
タダアーサナはただ立つだけですが、自分自身を丸裸にするようなポーズです。
心の揺れ(動揺)が体の揺れとなって現れ、普段の生活習慣や姿勢の癖が身体のラインに現れます。
「はい、タダアーサナをして」と先生に言われたときに、「はい」と堂々と自信を持ってポーズができるようになるには、普段から自分の姿勢や生活習慣、歩く姿勢、立つ姿勢などにも気をつける必要があります。
つまり、タダアーサナを極めるには、その練習の時だけでなく、24時間の動きを全て洗練させていく必要があるでしょう。
タダアーサナがなぜこんなに難しいかお分かりいただけたかと思いますが、タダアーサナだけでも完璧にすることを目指せば、人生が変わるほど生活全体がよくなることは間違いありません。