案外多いのが、クラスの1番最後に行うシャバアーサナを行わず退出してしまう生徒さん。
ここではシャバアーサナの時に退出してしまう生徒さんに対し、インストラクターとしてどのように対応すべきかについて考えていきましょう。
シャバアーサナが不要だと考えられてしまう理由について考えてみよう
ヨガを教える以前の話ですが、実は私自身がシャバアーサナについて理解が全くなく、途中退出してしまった経験が何度もあります。
「わざわざお金を払って運動をしに来ているのに、なぜお金を払って休まなければいけないんだ?!」とさえ思っていました。
またホットヨガスタジオで練習をしている時にも、度々途中退出してしまった経験があります。
それはシャワールームがあまりにも混雑するので、早く退出しないとシャワーが浴びられなくなってしまうから。
これらはあくまで私の場合ですが、シャバアーサナの前で途中退室してしまう生徒さんには、私のようにそれなりの理由があると考えられます。
「マットや着ているヨガウェアが汗で濡れていて仰向けになるのが気持ち悪い」「クラス終了時間が過ぎているのに延長してまでシャバアーサナ時間をとっている」「お水が飲みたい」「トイレを我慢していた」「レッスン中に鳴っていたスマホが気になる」「予定があって急いでいる」など、さまざまな理由があるはずです。
途中退室する生徒さんにとってはそれらの理由の方が重要でシャバアーサナの練習は残念ながらそれ以下なのです。
シャバアーサナにかかわらず、クラスの途中で出入りをすることをインストラクターやクラスによっては禁止しているケースもありますが、個人的には問題ないと考えています。
参加者はみんな大人ですから、その辺りは自分で管理していただき、怪我のないようにヨガの練習をしていただければ問題はありません。
しかし、ヨガのインストラクターとしてシャバアーサナがいかに重要なポーズであるかを伝え続ける必要はあると考えます。
クラスのはじめにシャバアーサナの効果や目的をあらかじめ伝える
「どうしてもトイレに行きたい」「次の予定がある」といった場合は仕方ないかもしれませんが、多少時間がギリギリになってしまったとしても「シャバアーサナをしておきたい」と生徒さんに思わせるには、シャバアーサナの効果や目的、そして気持ちよさをあらかじめ伝えておく必要があります。
シャバアーサナの効果その1:死の恐怖を乗り越える
普通のヨガレッスンではなかなかそこまで到達してもらうことが難しいですが、シャバアーサナの本来の目的は「臨死状態」に到達することだとされています。
つまり私たちは一回ごとのヨガの練習の最後にシャバアーサナを毎回必ず行うことで、何度も小さな臨死体験をするのです。
この練習によって私たちは「死の恐怖」から逃れることができる、とヨガでは教えられています。
シャバアーサナの効果その2:積極的に休む練習
フィットネスクラブなどでヨガの練習をしていると、エアロビクスなどのスポーツと同等なイメージを持たれてしまいますが、ヨガは単なるエクササイズやスポーツではありません。
特に他のエクササイズやスポーツと大きく異なる点は「ヨガでは積極的に休むことを推奨している」というところでしょう。
呼吸法をして呼吸の速度を落とす、ポーズをゆっくりキープする、瞑想などもマインドを休ませる練習です。
クラスによってはインヨガやリストラティブヨガなど終始仰向けで行うクラスもあります。
ヨガを通じて私たちは、普段ONになりっぱなしの心身をあえて休ませる練習をしているのです。
その究極が「シャバアーサナ」。
シャバアーサナは時間を無駄にしていることでも、サボっていることでも、消費カロリーをセーブしていることでもなく、積極的に「休む練習」をしているのだということを生徒さんに伝えましょう。
特に現代人は休むのが苦手ですから、シャバアーサナも練習しなければなかなかできるようになりません。
もちろん休むことによって心身の疲れが取れやすくなります。
ただ目を閉じて仰向けになっているだけでもその効果は高いですし、忙しい私たち現代人にとってはただ仰向けになって休むとはとても贅沢な時間です。
シャバアーサナの効果その3:ポーズの疲れを軽減させる
シャバアーサナはそれまで練習してきたポーズの疲れを軽減させる効果もあります。
シャバアーサナを行わないと、翌日に疲労感や筋肉痛などが残りやすくなります。
疲れを残さないためにもシャバアーサナは積極的に行った方が良いのです。
クラスでシャバアーサナをしてもらうために必要なこと
それでは実際にクラスの中でシャバアーサナを行ってもらうために、インストラクターはどのようなことを心がければ良いのでしょうか。
シャバアーサナの時間をあえて長めに設定してみる
まず1点目が「シャバアーサナの時間を長めに設定する」こと。
インストラクターの多くがシャバアーサナを最後の5~10分で、まるでおまけのように済ませてしまうケースが多いようです。
インストラクターがおまけと捉えて行っていると、途中退出してしまっても文句は言えません。
毎週たっぷり時間を取る必要は無いかもしれませんが例えば4回のうち1回(1ヶ月に1回程度)は、20分程度のシャバアーサナの時間を確保してみると良いでしょう。
90分のクラスならまだしも、60分のクラスで20分のシャバアーサナを行うのは勇気がいると思いますが、それには意図があることを事前に伝えましょう。
さすがに20分もシャバアーサナの時間があるとなれば、生徒さんは途中退室しづらくなりますし、それなりの効果があるのかもしれないと理解してくれる可能性が高くなります。
可能ならシャバアーサナにフォーカスしてワークショップを定期的に開催するのも一つです。
質の高いシャバアーサナを15分以上行うことは、2時間の深い睡眠と同等の疲労回復効果、リフレッシュ効果があるとされています。
5分程度ではその効果が感じられない人が多くて当然です。
クラスの最後に必ずたっぷりとシャバアーサナの時間をとる、とはいえクラスは延長はしない、ということを実践してみてください。
シャバアーサナを極上に変えるグッズの力も借りてみる
例えばシャバアーサナの直前にクラス全体にアロマスプレーを散布して香りの効果を体感してもらったり、生徒一人ひとりにアイピローや足枕、ブランケットなどを配って、心身を休めてみたくなる状況を作ってあげるのも1つです。
そういったグッズを使いたくて、シャバアーサナの最後まで参加してみようと考える人も少なくありません。
特にブランケットで体を覆ってあげることによる効果は絶大です。
人は何かに包まれていると安心できるから。
目元もアイピローがなかったとしても持参いただいたタオルを置くだけでも違います。
安心して目を閉じていいのだ、と伝えてあげましょう。
思い切ってシャバアーサナをクラスに取り入れてみよう
いかがでしたか。
シャバアーサナはどうしても軽視されがちですが、インストラクターの方が5分程度のおまけとしてクラスに取り入れている場合も多く、それだとシャバアーサナの良さがなかなか生徒さんに伝わりません。
一度はシャバアーサナの時間をたっぷり取ったシークエンスを考え実践してみてください。
シャバアーサナの深い効果に、多くの生徒さんはまた次回からもシャバアーサナをしたいと思うようになるはずです。