実はこれには深い理由があります。
その理由を知るとヨガの効果がもっと上がるはず。
ここではヨガスタジオに鏡がない理由を解説していきます。
伝統的なヨガの練習には鏡などない
フィットネスクラブなどでは大きな鏡が用意され、その中でエアロビクスやダンスエクササイズなどが行われます。
その流れでヨガのクラスも鏡張のスタジオで行われます。
しかし、本来のヨガは鏡がない場所で行われてきました。
インドのヨガセンターやシャラなどでも鏡張の施設については聞いたことがありません。
エアロビやダンスが動きをいかに洗練させていくか、いかにインストラクターと同じ動きをするかに重きを置いているのに対し、ヨガは完全に個人個人のもの。
どんな呼吸をしているのか、どんな内観ができているのかは、決して鏡に映るものではありません。
またインストラクターと同じ動きをしなくても十分な効果が得られますし、ポーズはあくまでガイドラインのようなものであり、正解ではありません。
ですからヨガをする上では鏡は必要ではないのです。
「今の自分にぴったりなアーサナ(ヨガポーズ)」は自分自身に聞いてみるしかなく、それはインストラクターのポーズを真似することでもたらされるものではありません。
ヨガとは体を柔らかくするための練習でもなければ、アクロバティックな動きができるようになる練習でもありません。
静かに座ったり、呼吸を見つめたり、普段動かさない場所を動かしてみたり、あらゆる角度から体を刺激してみたり、ヨガの練習のほとんどは自己の観察です。
インストラクターはあくまでガイドによる気づきを与えているだけで、インストラクターと同じ動きをして欲しいとは思ってもいないのです。
ヨガスタジオに鏡がない4つのメリット
1.自分にだけ集中でき人と比べずに済む
フィットネスクラブなどと違い、鏡がないことで自分に集中できます。
鏡に自分が映ると、無意識で頑張りすぎてしまったり、人と競争してしまったりしますが、これらはヨガには不要な行為。
ポーズができない、と自信を無くす必要もないですし、自分のスタイル(太っているとか痩せているとか)を気にする必要も全くありません。
ヨガウエアが似合っているとか似合っていないとか、そういったジャッジも不要です。
今の自分に集中するには「感じる」ことが重要ですが、鏡を「見る」ことで逆に集中ができなくなってしまいます。
2.ただ先生や人の真似をするのではなく頭を使える
ヨガは脳トレの要素がおおいにあると感じます。
例えばインストラクターが「左脚を大きく後ろに一歩引いて、骨盤を前に向けましょう」と指示した場合、それができる人は一体何人くらいいるでしょう?
実際は骨盤を前に向けているつもりで向けていなかったり、後ろ足の引きが甘かったりします。
だからこそ「インストラクターのお手本を見せてほしい」となるのでしょうが、お手本を見せたところで、まだ同じようにはできません。
つまり、お手本があろうとなかろうと、問題は自分自身にあるということ。
骨盤がどこかわからないのかもしれませんし、正面を向いているつもりで向けていないなら、体の歪みがあるのかもしれません。
足を後ろに引く動きは日常生活ではほとんどないので、その機能が弱っているのかもしれません。
自分の体は自分のものでありながら、自分の思う通りには動かせないもの。
その現実から何を気づき学ぶか、が重要です。
ある人は、自分の体が加齢によって動きずらくなっていることに気がつくかもしれませんし、ある人は筋肉が足りないことに気がつくかもしれません。
またある人は、自分のことさえ思い通りにならないのだから、人のことを変えようとするのはもっと難しいと哲学的な気づきを得るかもしれません。
このように頭を使ってヨガの練習ができることが、鏡を使わないヨガの練習の最大のメリットと言えるでしょう。
3.心の目を鍛えることができる
鏡がない場所でヨガを練習することで、自分の心の目を鍛えることができます。
自分の肉体がまるでスケルトンになったように感じ、捻りのポーズで内臓がぎゅっとねじられる感じや、逆転のポーズで頭の方に血液が一気に流れる感じや、逆さのポーズで足元から冷えやむくみが鼠蹊部の方に流れ落ちる感覚が、頭の中にイメージできるようになります。
やがて鏡には映らない呼吸の流れ、手のひらから出る温かい空気、足の裏から出る汗など、そういったものにも繊細に気づけるようになります。
そして、これら鏡には映らない体の内側の動き・心の動き、呼吸を見る「心の目」がどんどん育っていきます。
目を瞑ればいつでも自分の体の内側を感じられるようになり、「食べすぎているな」「イライラしているな」「呼吸が浅いな」といったことにも気がつけるようになります。
私たちの世界は目に見えるものだけでなく、目に見えないものも同じくらいあります。
その代表が、自分の内側です。
目に見えない部分とは何もスピリチュアルな話ではなく、呼吸や血流や心臓の動きや気持ちの変化なども含まれます。
そういった部分をいつでも自分の「心の目」でみてあげられるようになると、自己対話が上達し、自分に必要なことを必要なタイミングで的確に行えるようになります。
4.日常生活でも自分を客観視できる
このように鏡を使わずに心の目で見えないものを見る力を育てていくと、ヨガの練習だけでなく日常生活でも非常に生きやすくなります。
例えば、イライラをぶつけてきた相手の背景を推測することができたり、失敗と思ったことが大事なメッセージだったりすることに気がついたりします。
体調の悪い自分、機嫌の悪い自分、そんな自分をも客観的にみて、その原因にも気がつき、適切なセルフケアをすることもできるようになります。
私自身もいつも頭の上に自分の心の目があって、それで私自身をみているような感覚があります。
誰も見ていなくても自分だけは自分を見ている。
こう思えることで、安心感もありますし、自分を律する心も保たれます。
まとめ
ヨガのポーズを上達させたいのであれば鏡を使った練習は効率的なので時々は鏡を使った練習も良いでしょう。
ただ、ヨガを使って人生全体を好転させたいのであれば、あえて鏡を使わない練習を極めて欲しいと思います。
どんな場所でも構いません。
マットさえあれば、そしてそこで目を閉じれば、どんなポーズでも自分の内観のスイッチになり、心の目で自分を見つめてあげあることに役立つはずです。