いつものクラスに突如、上級レベルのポーズをさくさく決める人が現れたり、なんだかインストラクターのような人が現れたりして、焦ってしまう経験があるのではないでしょうか。
インストラクターデビューしたてだったり、苦手なポーズについてコンプレックスを抱えていたりすると、そんな「できる人」がクラスに参加することで心がざわついてしまうのは仕方のないこと。
ここでは、自分よりヨガができる上級者がクラスに参加したとき一体どのように応対すれば良いのか、その対応策についてご紹介します。
「ヨガインストラクターです」と名乗って参加する人はほとんどいない
必要以上におしゃれなヨガウェアを着ていたり、クラスが始まる前から180度開脚などのウォームアップをしていたり、クラス中にこちらの指示以上に上級ポーズを取り入れたりする生徒さんが入門・初級クラスに参加してくるケースがあります。
マンツーマンクラスでもない限り、こちらから生徒さんの職業を聞くことは稀で「もしかしてこの人、同業者?」と思っても、プライベートな質問なので聞き辛かったりします。
参加している上級者がインストラクターだったとしても同じで、わざわざ聞かれてもいないのに「インストラクターです」と自ら名乗ることはほとんどないでしょう。
逆に、インストラクターをしている自分自身が生徒として他のクラスに参加する場合も「インストラクターです」と事前に申告することなどないのでしょうか?
つまり、ヨガインストラクターが「インストラクターです」と名乗ってクラスに参加することは非常に稀なケースですし、相手がインストラクターかどうか、ヨガの上級者かどうかは、クラスを提供する側は事前に知ることができない情報なのです。
なぜ生徒さんのヨガ歴について知っておく必要がないのか?
相手がインストラクターであっても、上級者であっても、前提として「相手のヨガに関する背景をインストラクター側は知っておく必要はない」と考えて良いでしょう。
参加する生徒さんの怪我の有無や持病・既往症・基礎疾患や妊娠の有無などは、クラスの前に知っておくべき情報ですが、相手のヨガ歴についてはインストラクターは知らなくても良いのです。
「なぜ生徒さんのヨガ歴について知っておく必要がないのか?」
これには2つ理由があります。
なぜならヨガクラスとは入門〜上級の全クラスにおいて、
- ヨガとは呼吸さえできれば老若男女誰にでもできるものであることを伝える
- ヨガのクラスで提供するものは、体位法・呼吸法・瞑想をセットにした心身のリセット
という2つの目的をクリアすればよいからです。
つまり、参加する生徒さんがヨガインストラクターであっても、初級者であっても、上級者であっても、一貫してこの2つの目的を達成することができれば、それは「良いクラス」になるのです。
良いクラスを提供するために、自分が必ずしも参加者より上級ポーズができるかどうかは関係ありません。自分がこの2つを真摯に届けたいと思う気持ちや向き合う心が何よりも大切だからです。
上級者やインストラクターでもクラスに参加する理由を考える
さらに、なぜインストラクターや上級者であってもヨガクラスに参加するのか、その目的を考えると良いでしょう。
ヨガインストラクターであっても誰かのヨガのクラスに参加する権利はあります。
勉強のため・自分のヨガの向上のため・リラックスのため・瞑想や呼吸法の時間を確保するため、ヨガのインストラクターであっても、いやヨガインストラクターだからこそヨガのクラス参加は必要です。
他の生徒さん同様、もし相手が「◯◯がしたくてレッスンに参加しました」と事前に表明してきたのであれば、それにできる限り応えてあげる努力をするのは良いですが、そうでなければ自分がその日に提供しようと思っていたレッスンをそのまま提供すれば良いだけです。
仮に、相手がヨガのインストラクターでされて嫌なことがあるとしたら「偵察」「不必要なクレーム」「客引き」などが考えられますが、そういったケースが発生したという事例は指導歴13年の筆者の範疇では聞いたことがありません。
また、そういったよくないことを想像してしまうのは「自分のクラスに自信がない」気持ちの現れであり、「自分が自分のできることを背伸びしないでそのまま伝える」と堂々と振る舞えば、相手の様子に心を惑わされる必要はないのです。
もちろん、相手を褒めたり、自分がまだまだ勉強中であることを伝えたり、生徒さんに普段どんな練習をしているのかなどを聞いてみるのも良いでしょう。
無理に自分を「私はインストラクターなのだ!」と見せようとせず「今日は自分が教える番だけれど、いつもは自分もヨガを勉強している身です」と素直に背伸びしない姿勢を貫けば、どんな人がクラスに参加しても緊張する必要はないのです。
背伸びをせず、無理もせず、いつも通りのクラスを平常心で行うべき
大抵のインストラクターは深い理由はなく「いろいろなクラスを受けてみたい」「いろいろなレッスンを受けてみたい」「教える側だけでなく教えられる側にもなりたい」など、気楽にレッスンに参加しているに過ぎません。
もし相手が必要以上にポーズを深めたり、指示していないことをしていたとしても、それを止める必要もなく「すごいですね」と褒めればいいですし、あるいはスルーしても良いのです。
クラスはグループで進行しますから、たった一人の「できる」生徒さんに気を取られるのではなく、「できない人」や「全体」の雰囲気に気を配るべきです。
たった一人の「できる」生徒さんに、気持ちを持っていかれるのが最も良くないパターンです。
心の動揺が他の生徒さんにも伝わってしまい、他の生徒さんにとっては不満が残るクラウになってしまうこともあります。
常に全体を見渡し、今の自分ができることを精一杯やるに尽きます。
心が騒つく生徒さんが参加した場合、そんな自分を俯瞰し、できない自分を素直に認め平常心に戻す。
これもヨガのインストラクターとして必要な訓練の一つです。